忍者ブログ

しかばねRUIRUI 新館

公式とは関係ありません。 趣味のブログです。 腐的表現があります。 鎧伝サムライトルーパーの女性向け同人ブログ。 (当秀・ラジ秀)イラストと小説を展示したいです。 投稿板 http://www14.oekakibbs.com/bbs/orirukokunn/oekakibbs.cgi

[PR]
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

ちゃとくん 作 当秀SS

君が好き


人生で初めてのクリスマスパーティーは、秀、お前と2人だったよな。
2人ともまだガキで、雀の涙ほどの小遣いを出し合って。
鶏の足を2本と小さなショートケーキをひとつ。
シャンパン代わりに1本のファンタを分け合って乾杯したっけ。

両親の離婚で1人になった俺に気を使ってるのかと思いきや、
お前も心底楽しんでたよな。
「俺んち店やってるから、クリスマスマスにパーティーってしたことないんだ。
だから。お前とこうしてパーティーできるの、すっげー楽しい!」
って本当に嬉しそうだった。

「これからは毎年こうして、2人でクリスマスパーティーができるな。」
と全開で笑うお前の笑顔にドキドキしたのは、きっとあれが最初。


月日が流れ、迦雄須と出会い、仲間たちと出会い、
もっと大人数で豪勢なパーティーが開かれるようになっても、2人のパーティは続いた。

伸たちの料理が食えなくなるのはもったいないから、と、
あの時と同じ、ほんの少しのケーキと鶏肉とシャンパンで、みんなに内緒で乾杯していたあの時間の方が、俺にとっては大切だった。
特別で、何より大切だった。
2人だけのパーティーも、俺の前で全開で笑うお前も。


路地の奥から何かを壊すような派手な音と幾人かの叫び声、怒鳴り声。
聞き慣れたあの声は・・・間違う筈もない、秀の声だ。
音の出所へと向かってみれば、そこにはたくさんの人影。
20人程のやけにガタイのいい奴らに囲まれて多勢に無勢か、さすがの秀も少々苦戦しているようだ。
半ば予想していた事態に、当麻は軽くため息を吐くと、秀の加勢を始めた。


当麻の援護が加わって数分後、「覚えていろよ!」というありきたりな捨て台詞を残し、奴らは逃げていった。
身体についた埃を軽く払いながら秀へと振り返ると、秀は気まずそうに小さく笑うと「いてっ」とこぼして顔をしかめた。
見ると唇から血が出ている。
身体の方にも、何発か食らったようだ。
当麻は秀に大きな怪我がないのを確認すると、わざと聞こえるように大きくため息を吐いた。
「おまえなぁ、無茶はやめろってあれほど言ったやろ?」
「へへっ、お前にこうして説教されるの、久しぶりだなぁ。」
鎧戦士として戦っていた時も、その前からもずっと、思ったことをそのまま行動に移す秀のまっすぐなところは変わらない。
秀は大きくひとつ背伸びをすると、ゴロンと地面に寝っ転がった。
空を見上げるその顔は、何だか少し嬉しそうに見えた。
「何があった?」
「カツアゲ、されてて。うちの制服きてたから、放っとけなくってさ。」
秀の話だと。最初のほうは3、4人だったそうだ。さっさとのして帰ろうと思っていたら。「仲間を呼びやがった」のだそうだ。
「力あるものは。力なきものを守るもんだ。それを、自分の欲の為に暴力を振るうなんて、許せねぇ。」
まっすぐな視線は空へと延びたまま、おそらく今、秀が見ているのは。
あの時の瓦礫で埋まった新宿だろう。
己の強大な力に、一瞬でも驕ってしまいそうになった自分を恐れて武装が出来なくなってしまったあの時の秀を、
そして力無き者の為にと見事に立ち直ったあの強い瞳を、当麻は一生忘れることはないだろう。

 

その強い瞳を、ずっと見ていたいと思った。
そのまっすぐな視線に、とらわれたいと思った。
しかし。
焦がれる程のその視線は鋭すぎて、いつからか当麻と秀と目を合わせることが出来なくなっていた。
・・・ひた隠しにしている秀への想いや、ココロの奥に住む欲望までをも見られてしまいそうで。

「それに、」と秀は空を見ながらつぶやいた。
「ああいう、仁(ひと)の道から外れたことをするような奴らは許せねぇんだよ。」

秀がつぶやいたその一言に、当麻の胸がツキンと痛んだ。

ーーー秀にとっては、俺のこの気持ちも、仁の道からはずれているんやろうか。
一本気でまっすぐな。秀のこと。
男の当麻が、同性の秀に恋愛感情を抱いているなど、きっと考える余裕すらないに違いない。
許せねぇんだ、と吐き捨てた先程の秀を思い出すと、また胸に痛みが走った。

「・・・そこに、どうしても譲れない想いがあってもか?」

こぼれてしまったつぶやきは、まるで弁護をしているかのようで、そんな自分に当麻は思わず苦笑した。

「カツアゲにどんな想いがあるんだよ・・・当麻、お前この頃、ちょっとおかしいぞ。」

見ると、空へ向けられていた秀の視線は、まっすぐ当麻へと向けられていた。

ゆっくりと、確かな足取りで、当麻へと近づく秀。
久しぶりに見た真正面からの秀の顔は眩しくて、当麻は絡んだ視線をはずすことが出来なかった。
「この頃、俺を避けているよな?なんでだよ?どうして目を合わせようとしない?・・・俺、何かしたか?」

今や目の前にある秀の顔。その大きな瞳で、まっすぐに当麻をとらえて離さない。

「言えよ。当麻。何も言わずに逃げていくなよ。」
こんなに近づいたのは、いつ以来だろう。
当麻は、言えよ、と動く秀の唇を見ていた。
その赤くふくよかな唇を。

言えよ、というのだから、言ってやろうかーーー。
ずっと隠してきた自分の気持ちを。
その何気ない仕草に。
実は欲情しているという秘密を。
傷を負った当麻の胸が、そんな自虐的なことを考えさせた。

「・・・お前が、好きなんだよ。」

搾りだすようなそのセリフを、当麻はやっと口にした。

嫌悪の表情や拒絶の言葉、他にもあらゆる覚悟を決めて、やっとのことで絞り出した「好きだ」という言葉。
それなのに、あろう事か秀は、きょとんとした顔のまま。
「俺も当麻が好きだぜ?」とケロッと言ってのけた。
あらゆる覚悟を決めて、あれほどの想いを込めた「好き」が秀に少しも伝わってないことに目眩がした。

「ち、違う!俺の好きはそういう好きやないんや!」
「そういう好きってどういう好きだよ?」
「~~~っ、特別の好きや!他とは違う、お前だけが特別に好きなんや!」
「・・・俺も当麻が特別好きだぜ?」

全く一方通行の会話に、当麻は嫌でも思い知らされる。
それは、つまり、秀の中にそういう選択肢が全くないということ。
沸騰した頭で、自分でも何を言っているのかわからなくなってくる。
こんなに必死に説明して、どうなるというのだろう。
ーーー答えはわかりきってることなのに・・・!
そう思ったとき、当麻の中で何かがプツンと切れた。
秀の肩をがっちりと抱き、片手で顎を固定する。
目の前で動く真っ赤に熟れた果物のようなその唇に噛み付いた。
当麻の目の前で、紺紫の瞳が大きく見開かれた。
驚きで力が抜けたところに、すかさず舌を差し入れ、ゆっくりと、歯列をなぞる。
そのまま遠慮せず秀の口腔をむさぼった。
酔いしれてしまいそうになるのを必死でこらえ、秀の身体を引き剥がした。
2人の唇の間に、銀の糸がつながった。
「わかったやろ。・・・もう、俺に近づくな。」
2人の間につながる銀の糸を手の甲でぐいっと拭うと、唖然としている秀を置いてその場から逃げ出した。

 

その日のうちに、当麻は大阪の実家に逃げ帰った。
柳生邸で気の合う仲間達と暮らす居心地のいい生活は捨てがたかったが、
秀の唇の味を知ってしまった今、
そして自分の切ない希みが叶うことはないのでと悟った今、
同じ屋根の下で秀と過ごすのは辛かった。

夢にまで見た秀とのキスは、想像以上に甘くて。熱くて。
自分の中心がどんどんと夏を帯びていくのを止められなかった。
何をする気力もなく、食事もとらず、カーテンさえ開かずに、当麻はただ死んだように時間を過ごした。
こんなに長い間1人でいるのはずいぶんと久しぶりだ、とぼんやり思う。
そして、気づくのだ。
秀と出会ってからは、当麻の隣にはいつも秀がいたのだということに。
当麻の胸がまたツキンと痛んだ。


当麻が大阪に逃げ帰って数日。
蒼い闇に包まれた当麻の部屋に、オレンジ色のまばやい光が差し込まれた。
久々に開け放たれたカーテンの向こうから、眩しいくらいの太陽の光。
「まったく。俺がいなけりゃまともに生活もできねぇのか?」
いつもと変わらない口調それは、間違える筈もない、ずっと焦がれている声。
逆光に浮ぶシルエットから、呆れたように笑う秀の顔がかすかに見えた。
「お・・・まえ、なんで」
「みんなの伝言を伝えに来たんだよ。」
唖然とする当麻に、秀はちょっと怒ったように続けた。
遼から。今日のクリスマスパーティーは7時からだからな。遅れずにちゃんとこいよ!
純から。当麻兄ちゃんは僕と飾り付け係だからね!
征士から。プレゼント交換用の贈り物も忘れずに用意しておくのだぞ。
ナスティから。あなたの好物もたくさんあるのよ。楽しみにしてて。
伸から。僕が腕によりをかけて作った料理を無駄にしたら・・・後でどうなるかわかっているね?

「そして俺は、毎年恒例のヤツ、ほら。」
そう言って秀は、小さな紙の箱を当麻の目の前に差し出した。
中には苺のショートケーキ。そしてケンタのチキンが1ピースと、ハーフサイズのシャンパンが1本。
そう。今日は12月24日。
当麻が蒼い闇に沈んでいる間に、世間ではクリスマス・イブになっていたのだ。
「約束だろ。2人でクリスマス。やろうぜ。」ふわりと。
秀の顔に全開の笑顔が咲く。
当麻は、自分の頭がクラクラするのを感じた。俺は何の為に・・・!
「お前っ・・・、言ったやろ?近づくなって。俺はお前が・・・っ」
その時だ。
目の前に紺紫の何かがよぎった。
次いで唇に柔らかい感触。
秀が当麻に口づけていたのだ。
カッとなった当麻の頭が、その一瞬で思考を停止する。
当麻が大人しくなったのを確認すると、秀はゆっくりと唇を離した。
「言っただろ?俺も、当麻が好きだって。」
ゆっくりひとつ息を吐くと、秀はまだ唖然としている当麻の胸ぐらを掴み上げた。

「だいたいお前は頭いいくせに説明がヘタなんだよ!何だよ『そういう好き』って。あげくに勝手に勘違いして、1人で結論づけて、勝手にいなくなるなよ!」
秀は一気にまくしたてると、掴み上げている当麻の胸に額を押し付けた。
「・・・あんなキスだけ残して、いなくなんなよ。」
表情のみえない秀に、当麻はおそるおそる手を伸ばす。
「秀・・・ホンマに?友達の好きやないんやで?」
「・・・まだ言うかっ。」
「俺の好きと秀の好きと、同じやと思っていいんか?」
「あぁ。当麻が好きだ。そう言う意味で。」
「・・・俺、キスで終わらせるつもり、ないで?」
「・・・っ、わかってる、よ。」
「・・・秀」
「まだ何かあるのかよっ」
「も一回、キスして・・・えぇ?」

小さくうなずく秀を、ぎゅうっと、
力一杯抱きしめる。腕の中に、確かな存在を感じた。

「おわっ、やべ、もうこんな時間じゃねぇか!
当麻、着替えろ!3時の新幹線に乗るぞ。」
「え、新幹線?」
「帰るんだよ。柳生邸に。みんな待っているんだから。」
真後ろで秀に急かされ玄関の戸を開けると、当麻の頬につめたい物が舞い降りた。
「あっ・・・雪。」

ついさっきまでの太陽を見せていた空は、全く表情を変えていた。

「ずーっと2人でクリスマスを過ごして来たけどさ、初めてだな、ホワイトクリスマスは。」

目を瞬かせ、嬉しそうに空を見上げる秀が、目の前にいる。

当麻は湧き上がる幸福感を噛み締めた。


そらから舞い降りた雪は
ゆっくりとゆっくりと、大地へと降り積もる。
大地は無限にそれを受け止める。
世界中の全ての人へ、幸せなクリスマスを。

Merry Christmas!
PR

コメント

コメントを書く