忍者ブログ

しかばねRUIRUI 新館

公式とは関係ありません。 趣味のブログです。 腐的表現があります。 鎧伝サムライトルーパーの女性向け同人ブログ。 (当秀・ラジ秀)イラストと小説を展示したいです。 投稿板 http://www14.oekakibbs.com/bbs/orirukokunn/oekakibbs.cgi

[PR]
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

ちゃとくん作 当秀SS (死にネタ注意)

 
千の風になって                ちゃっとくん  作


一瞬の出来事だった。
オレンジの鎧を貫く鋭い閃光。
音もなく崩れ落ちていく双角。

「ーーー秀!!!」

飛び散る血飛沫が、華のようだと、ぼんやりと思った。


阿羅醐城を目前にして、陣の一角が崩れた。
それは、あり得ない筈の出来事で。
最強の鎧をまとう金剛の戦士の陣没は、この戦に勝ち目がないことを物
語っていた。


「秀! 秀!! 血が止まらない。 嫌だ、目を開けろ、秀!!」
「・・・当麻、か・・・わり、しくじっちまった・・・」

 胸に掲げた金剛の紋が真っ二つに割れ、そこから止め処もなく血が流
れ出していた。

 「秀、喋るな! 今手当をしてやる。 死ぬな! 絶対に、死ぬな!」

 当麻は泣きじゃくり、顔をくしゃくしゃにしながら必死に自分の鎧パ
ワーを送り込む。
 しかしそれは、身体を貫いた傷跡をそのまま素通りしているかのよう
に、手応えがなかった。

「と、うま・・・っ、もう、いい。 わかるだろ? ・・・俺
は・・・っ、もう、戦えない…」
 口を開くたびに流れ出る鮮血は、まるで秀の命そのものを削り取って
いるかのようで。

「喋るなって、言ってるやろ、秀! そないなこと、言うな! お前
は、死なないっ!!」
「・・・聞け、よ、当麻・・・っ。俺は、・・・っ、ただじゃ死な
ねぇ。根性で・・・風になってやる…だから」

 秀は顔をしかめながら、少しだけ身体を起こす。
 その瞬間、ぱっくりと割れた金剛の紋から血が噴き出した。

「秀っ!! 動くな! 俺は、どうしたらいい? 生きていけない、お
前がいなきゃ、生きていけない・・・!」
 泣きじゃくる当麻の顔をまっすぐに見つめ、秀は言葉を続けた。

「俺は、死んだら、風になる・・・。大きな…、空を、吹きわた
る・・・千の風に。お前をとりまく、風に、なる…っ。そうすれば、お
前の、一番近くに・・・居られるだろ?」

 そして秀は、静かに笑った。
 唇を血で真っ赤に染めた秀は、紅を引いているように綺麗だった。

「だから、お前は、・・・最後の最後まで、ちゃんと・・・天空で、い
ろ。・・・いいな?」
 それは、決して自ら死を選ぶな、という、秀からの最後の忠告だった。

 血で染まった手をゆっくりと持ち上げると、秀は親指でそっと当麻の
涙を拭った。
 いつも温かな秀の手は、氷のように冷たかった。

「秀・・・っ!!」

 そのまま、力無くまっすぐに落ちていく真っ赤な手。
 その紫紺の瞳が、当麻を映すことはもう二度となかった。



 五人の鎧戦士たちは、その戦いに敗北した。
 阿羅醐は人間界を支配し、人間たちは予想もつかない恐怖に怯えた。
 迦雄須は、次々と倒れていった鎧戦士たちの命と、自分の生命を柱に
して、この世界を凍結させた。
 どこかで間違ってしまったこの世界の記憶と、命を賭して戦った五人
の戦士たちの記憶を、天空に託して。


 異次元か、異世界か、この世界と似て非なる場所で、今度こその正義
の勝利を願って。
PR

コメント

コメントを書く