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しかばねRUIRUI 新館

公式とは関係ありません。 趣味のブログです。 腐的表現があります。 鎧伝サムライトルーパーの女性向け同人ブログ。 (当秀・ラジ秀)イラストと小説を展示したいです。 投稿板 http://www14.oekakibbs.com/bbs/orirukokunn/oekakibbs.cgi

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カズナオ作 当秀SS

「冬休暇・ウィンターホリディー」

年末12月のくそ忙しい時期に奴が、部屋に居座っている。

「いや~。なんか研究承認がおりるまで暇になってよぅ。開店休業状態。中途半端だから、有給くっ付けて冬休みにしたんだ。」

「それは、いい。それはいいけど。なんですぐ俺のうちにくるんだよ!」

「ひとりで部屋にいると食べ物とか他いろいろめんどくさくってよ。」

「うぅぅ・・ようするに、お前は忙しい俺にいろいろ相手して欲しいと。」

かみあわない会話に頭が痛くなってきた。こいつといると俺は堕落する・・間違いない。


俺、秀麗黄のうちは横浜の中華街にある。
一階は店で。二階が家族で暮らしている自宅。三階がワンルームで賃貸になっているんだが。
俺も兄弟も育ちすぎたため。今は三階のワンルームをひとつ俺の部屋としてもらっている。

奴、羽柴当麻は見た目はいい。頭もいいんだが。人としてどっかおかしいんじゃないか?と思うことがままある。
二階の俺の自宅では出来る奴のようにふるまっているんだが。三階の俺の部屋にもどると、ダメ人間になる・・

「何でもいいけど、手伝えよ~。働かざるもの食うべからず。」
俺はダメ人間にそういうと、店に行く仕度を始める。

「また。洗い場ですか~?」
奴はどっかで見た犬のように目をうるませている。

肉体労働は向かないのですか。
と勝手なことを言っているので、クッションを投げつけてやった。

***

洗い場で俺、羽柴当麻は山盛りの皿を洗っている。

冬の厨房も地獄だった。
末端冷え症の俺の足先は冷たく感覚がなくなった。
熱い湯と洗剤の入った桶と、冷たい水で交互に皿を洗っていると。
手がふやけて、指先から血が出てきた。

「あぁ~。技術者の白魚の指が~。」

俺が叫ぶと。秀がこちらを睨んできた。
オ~怖い怖い。早く終わらないかな。

俺は秀の部屋のこたつを思いえがいた。

こたつで足先を温めていると、本当に幸せな気持ちになる。
秀の足にぶつかって、「冷て!」と怒鳴られるのも、子守唄のようだ。
なにか、この感覚は、昔、宇宙を漂っていたときを思い出される。
あの時も、遠くに近くに秀の気配や声を聞いたような。

「おい。」
秀が洗い場に入ってきた。

「お前、手を見せてみろ。」

俺があかぎれた、手をみせると、顔をしかめた。

「後で薬と手袋だな。」

「手袋?」

「薬が良く効くように密閉するんだよ。
あと、お前手が冷たいぞ。体質を変えるよう努力しろよ
触れられる身としてはたまらないんだよ。」

そういいながら、出ていった。
俺は、その一言一言が嬉しくって、顔がニヤニヤするのを止めることができなかった。

***

夜、下の秀の家でご馳走になり、
そうそうに秀の部屋に引き篭もった。
「おぃ。手のあかぎれ見せて見ろ。」
そういう、秀の唇を俺の唇で覆った。
「薬も絆創膏も手袋もごめんだ。折角のお前の肌の感触が楽しめなくなる。」
舌を入れてねっとりと吸うと秀も返してきた。

下にお前の家族がいて団欒してると思うと興奮するなぁとか、
あんな凄いことや、こんな凄いこともしてみたいとか、色々考えながらシャツをたくしあげる。
「インターフォンをあげて、下に声を聞かせたい。」
つい、心に思っていることが、言葉に出てしまった。
「一体、何想像してんだ!テメェー!!」
俺のからだの下から怒号が聞こえてきた。
物心ついたときから、自分の家族は崩壊していて、もう子供としての扱いをうけていなかったから、人への接し方は自然に決まった。
素の自分をさらす事はなかったし、意味がないと思っていた。
秀に会う前はそう思っていた。他人の為に、自分を傷めるなんて馬鹿馬鹿しいって当然みたいに。
秀といると、緊張がとけて何でも口に出てしまう。
いや、何でもじゃない、口に出してないことは、結構ある。

俺は・・俺は秀に救われた・・秀といて本当に・・
俺は秀を・・
俺は秀が・・・・


***

羽柴当麻という奴は、
普段は大人びた、俺にはわからん理屈をこねているが。
時々、置き去りにされた犬のような、不安な表情を見せる
俺はそれが気になってほおっておけなくって、ズルズルと今までくされ縁でつきあっている。
つきはなさい俺も、悪いか・・・俺・・堕落している。
いつからこんなことになってしまったんだろう。
昔からの幼馴染で馬鹿やっていた。

奴に呼び出されて聞いた言葉。

ここにくる前は死にたいと思えるようなことがあっても、実感できなくて、あぁそうかぐらいにしか感じていなかった。
お前と一緒にいるのが楽しくって、いつの間にかお前のことしか考えられなくなって。お前がほかの誰かと仲良くしていてもやける。
スマナイ・・でも、俺、秀が好きなんだ。

その言葉は今も俺を縛っている。

***

山下公園の芝生に寝転ぶ。
鳥がいく。
あいつは、よってくるカモメと戯れている。
天空でなくなった奴に、まだ、鳥がよってくる。
やっぱり人間よりいいのか?

たった一人で宇宙をさまよっていて寂しいとか思わなかったのか。
俺はお前に会えなくなると寂しい。
言ってはいないけど、恋しくて声を聞きたいときもある。
いつもお前のことを思っている。

能天気にこっちに手を振ってやがる。
お前、俺がこんなに色々考えてるなんて思ってもいないだろう?

***

大晦日だ。
流石に店にくる客も減り、みんな自分の家族と新しい年を迎えるのに頭がいっぱいだ。
「やっと、終わった。寒び~。」
俺は秀の部屋に入るなり、炬燵にもぐりこみ、スイッチを入れる。
「お前は、猫か?」
秀は呆れ顔で電気とエアコンとテレビをつける。

テレビでは、行く年来る年をやっている。
「さあ、新年のカウントダウンです。10、9、8、7、」
何を思ったのか。秀はいきなり部屋の電気を消し、窓を開ける。
うわ、寒び~~。冷たい風がカーテンをゆらす。
「3、2、1、0」
テレビも消されてしまった。
一瞬の静寂のあとに
横浜港に停泊していた船が一斉に汽笛をならす。

「新年あけましておめでとう。今年もよろしくな!」
秀を見ていると胸がいっぱいになってきた。
「今年といわず、よろしく。」俺は答える。

汽笛が近く遠く俺たちを祝福しているようで、
開けっ放しに窓から風が吹き込むのもおかまいなしに、俺たちはいつまでもいつまでも聞いていた。

いつまでも、よろしく。

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