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しかばねRUIRUI 新館

公式とは関係ありません。 趣味のブログです。 腐的表現があります。 鎧伝サムライトルーパーの女性向け同人ブログ。 (当秀・ラジ秀)イラストと小説を展示したいです。 投稿板 http://www14.oekakibbs.com/bbs/orirukokunn/oekakibbs.cgi

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夢野かつきさん 作  ラジ秀小説
008年12月12日 (金)
 

「恋し愛しの騙し癖」  夢野かつきさん 作


妖邪界に遊びに来ないかと誘われたのは、
あの戦いが終わって数年が経ち、
大型連休を控えた日のことだ。

 久し振りに仲間だった皆にも会えるのかと思ったら、
他の連中は用事があるらしいと残念そうな顔をして、
「せめて金剛だけでも連れていかないと、手ぶらで戻ったら何を言われるかわからない。」
と頼み込むので仕方なく付き合ってやることにした。

元敵陣に単身乗り込むのは、
ちょっと不安ではあるけれど、
寂しそうに笑うあいつの顔を見てるのも忍びなかったから。
 
同行を承諾したときの破顔したヤツの笑顔に、
思いのほかドキリとしたのはきっと気のせいだと思う。

 久し振りに踏んだ妖邪界の地は、澄んだ空気をしていた。
 
うまく復興が進んでるんだなと話しかけたら、
「場所による。」と、そっけない答えが帰ってきた。
「あの戦いの最中でも、こういった平和な場所は存在していたんだ。」と。
 

「螺呪羅、帰ったか!!
金剛、よく来た!!歓迎するぞ!!」
 
着いた途端、悪奴弥守の歓迎が激しくて面食らった。
こんなやつだったか?記憶にある悪奴弥守の姿は、もっと邪悪で恐ろしいイメージだったのに。
年を重ねて年齢が近くなったせいかやたらと身近に感じる。
むしろ類友ともいえる匂いを感じる。
 
その夜は歓迎会を開かれて、
そんなたいしたことじゃないのにと思ってたら、
「酒を飲む理由が欲しいだけだから気にするな。」と、那唖挫に言われた。

「しばらくはつきあってもらうぞ。」とにやりとされ、
「受けて立つぜ!」と答えて二人で笑いあったりしたのが、なんだか不思議な気分だ。

それを少し離れたところで見ていたアイツが、そっと寄ってきて、「金剛は馬に乗ったことはあるか?

悪奴弥守は毎朝馬を走らせる習慣があるから、よければ明日の朝にでも付いていくといい。」
 
おだやかな笑顔でそう言われ、言葉に甘えて翌朝の早朝乗馬に付き合ってみた。


「二日酔いにはならなかったか。」と軽口を叩く悪奴弥守に、
そんな柔じゃねぇと返すと、
「螺呪羅が部屋に行かなかったか?」と聞いてくる。
来てないと答えたら、悪奴弥守は意外そうな顔で俺の顔を覗き込み、
ふと、遠くを見つめて寂しそうに「そうか。」とつぶやいた。

 
そんなふうに数日を過ごし、
そろそろ連休も終わるだろうから帰ろうかと思ったころに、
戦が始まったという知らせが届いた。
 
瞬時に城内に走った緊張した空気に、忘れかけてた戦いの匂いを感じる。

鎧を身に纏い、
「すまぬ、少し留守をまかせる。」と、厳しい顔でヤツは言い、
悪奴弥守や那唖挫と共に出かけて行ってしまった。

「俺も手伝うぜ。」と言ったら、慣れない戦場では足手まといだから来るなと言われた。
 
迦遊羅も部屋に籠もってしまい、何もすることがなく、
だからと言って何かしたいわけでもなく、悪奴弥守に頼まれた馬の世話をこなし、
もしもに備えて戦いを想定した訓練をした。

 数日経っても奴らは帰って来なかった。思いのほか苦戦しているのだろうか?
 
心配が焦りに変わる頃、迦遊羅が部屋からよろよろと青ざめて出てきた。
「北からも新たな軍勢が来ています。急いで悪奴弥守殿達に伝えないと・・・!」
 
もう、いてもたっても居られなくなった俺は、無理矢理その伝令役にかって出た。

危険だからと諭されたが、
伝えたらすぐ戻るからと必死に頼み込み、
ここ数日ですっかり俺に慣れた愛馬を走らせて戦場に向かった。

「何が平和だ。あの馬鹿やろうが!!」
 
道行く先は、あの懐かしい戦いの頃の荒廃振りと何も変わらなかった。
 何も。
 アイツは、俺に平和な部分しか見せずに、安心させようとしていたようだ。
それは、とても寂しくとてもくやしい想い。
不謹慎だけど、俺がいる間に戦が起こってよかったと思う。
 

本当の姿をやっと見た。
 本当のアイツの姿をやっと見られる。
2008年12月12日 (金)
 

 戦場に着き、見知った顔を探す。
遠くで剣を交わし技を放ってるヤツを見つけた。
妖邪界を立て直そうと戦うアイツは、とても勇ましく美しさすら感じられた。

 さらに敵に斬り込んで行くヤツの背中に、別の敵が躍り出たのが見えた。
「螺呪羅!!」
気付くと、そう叫んで、
馬を敵に向けて走らせて突っ込んでいた。
 
武装する暇もなく、敵の太刀をアンダーギアで受ける。
 馬から転がり落ち、受け身を取れずに倒れたところに、敵が剣を振りかざす。
 
もう、駄目だ。と、思ったその時、敵の首が飛んだ。
「馬鹿者!!何故、来た!!」
 そう叫ぶアイツに、迦遊羅からの伝言を伝える。
「一旦、退くぞ!
悪奴弥守、深追いするな!」
 
ひとりの決断に、さっと反応し、全体が退却モードに入る。
 
俺は、ヤツの馬に引き上げられ、
抱え込まれるように乗せられる。

馬を走らせづらいんじゃないかと問うと、
いざという時に後ろにいられると守れないと、不機嫌そうに言われた。
 
守られなくても、平気だと言おうとしたら、
「無事でよかった・・・心配させないでくれ・・・。」と、
呟かれて何も言えなくなってしまった。


 城に戻ると、戦いの最中の匂いは消え、また宴会と乗馬の日々が始まった。
ようやく、これは、魔将達の休息なのだと知る。


 ヤツはまた穏やかな心配そうな笑顔で俺の体調を気遣う。

 俺もヤツが無事に生きてここにいるのが嬉しくて、ゆったりとした時間を楽しんだ。

 さすがにもう戻らないとまずいだろうと、
そろそろ戻ろうと思う旨を告げると、
何故か皆の顔が不思議そうな表情になった。

「お前、ここに永住するんだろ?」
 
悪奴弥守の言葉に面食らう。
何を言ってるんだ?
俺は遊びに来ただけだぜ?

「ならば、ここに来た翌日には帰らなければならなかったのだぞ?
これだけ長いことここにいたのだから、
もう元の世界では数年経ってしまっている。

もう戻らずここに住むつもりで来たのだろう?
迎えに行った螺呪羅からそう聞かされたであろう?」

 那唖挫の言葉に愕然とした。
聞いてない。
そんなこと、聞いてない!!
「螺呪羅、俺を騙したな!?」

 部屋に駆け込み、1人で佇んでいたヤツを押し倒し、思いっきり殴りつける。

 端正な顔がみるみる腫れていく。
為すがままに俺の怒りを全て受け入れ、
俺の怒りが多少落ち着いたものになった時に、
ぽつりと呟いた。
「こうしないと、もうお主に逢うことは叶わなかった。」

 そんなもの、いつでも遊びくればいいだろう!!

「数年を待たずに、お前は年を取って寿命を迎えるのにか?
私が戦で戦っている最中に、お前の寿命が来てしまうんだ。
また取り残される。」

 寂しそうに言葉を紡ぐ。

「金剛、お前に出会わなければ、こんな想いを思い出すこともなかったのだ。
もう、お前がいない世界に生きていくこてなど、耐えられん。」

 とつとつと呟かれる。それはとても真剣で切なくて。

「だったらお前が俺の方に・・・」と言おうとして、
今の妖邪界から螺呪羅がいなくなったら再建が滞るであろうことを思い出した。

「すまないと思っている。お前を騙すのはこれで最後にすると約束するから」

 ふと、一呼吸置いて俺を見る。涼やかで寂しそうで、愛おしそうに、
俺を見て、「ここで共に生きて欲しい。」と、ささやく。


馬鹿やろう・・・。
 いきなり大変な決断を迫られ俺の脳がとまどう。

「本当に、最後だからな。約束しろよ。」

 ヤツの胸を小突きながら言うと、アイツは嬉しそうに感謝の言葉を紡ぎ、俺を力いっぱい抱きしめた。

 親や兄弟や友人達に心の中でそっと謝る。
でも、俺の預かり知らないところで、
こいつが戦に敗れて朽ち果てたりするのは耐えられないと思った。


 この気持ちがどこからくるのかは、まだしばらくは気づかない振りをしていようと思う。

終わり。
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