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「あ」
堪らず吐息と洩れた音は奴を愉しませるに充分な質だった。
奴の足が着物の裾を割ってゆるゆると動く。
「あ あっ」
突っ伏した褐色の肌の持ち主から、また音が洩れる。
「金剛。お主は好きものよのぅ。」
赤い女物の着物を着させられた男は
普段はそんなものは、似つかわしくもない健康的な男である。
零れ落ちた音は閑とした和室に一層響くのであった。
「もうやめろ。こんな事」
やっと人語を放つ。だが依然ぐったりしている。
「やめろ?お主悦んでおるではないか・・」
なに。と脚で着物の中を暴いた。
部屋の蝋燭の灯りのもと
もたげた足うらより糸をひく
そり勃つ秀のそれは、女物の着物とアンバランス差をさらに引き立て、異様なさまを創り出した。
あまりの屈辱と羞恥に噛んだ唇から血が滲む。
直ちに全てを糾したくとも、手足は緊縛されており
身動くのは情けなく、弄ばれるそれだけだった。
「愉しいであろう?」
また踏み、擦りつける。
加えられた刺激に
「ウンッ」と咽が鳴る。
「はは、そうであろう」
楽しげに蜘蛛男はわらった。 -
「終わる恋じゃねぇだろ」
午後五時の中華街、俺はいつものように店を切り盛りしていた。
「秀料理長、お客様がお会いになりたがっております。」
店の配膳の女の子にうながされて、厨房から出てみると、いつもの、灰色の髪、眼帯のやつがいた。
「また、きたぞ。金剛。」
「おっ、今日はサングラスかけているのか?
俺まだ、店あるから、そうだな・・八時までどこかで時間をつぶしておけ。」
「わかった。」
❋❋❋
八時に副料理長にすべてをまかせ、俺は早々に店を出る。
外では、ラジュラが、ネオンの雑踏にまぎれて、
まるで映画のワンシーンのようなシルエットをかもし出していた。
「どうした、金剛。」
「あっ、いや。」
「いこうぜ」
見ほれていたとは言えず、腰をこづき歩きだす。
中華街のそばのホテルの中のバーで飲みあかすことにした。
「金剛、お主また大きくなったなぁ?もう、酒もたしなめるのか?うれしく思うぞ。」
ホテルのバーでのラジュラは饒舌だ。
「今日は朝まで大丈夫なのか?」
「あぁ・・」
俺はいつものことだろうと思いつつ答える。
「ところで魔将たちで起こした、怪しげな会社は順調なのか?」
「不老不死と精力剤にはお金を厭わないものが多くて順調だ。」
世の中変なところに金がたまっているらしい。
つまみを食べお腹も、気分もいい具合になってきたところで、俺達は、ホテルの部屋にしけこむことにした。
❋❋❋
ラジュラとの逢瀬は何回になるのか。
もう数え切れないぐらい肌を合わせてきたけど、
こいつ巧いよなぁと言うのが感想である。
自分じゃこんなに肌があわ立つことはない。電気が走ったみたいにびりびりくるときもある。
ラジュラの愛撫を体全体でうけている俺、とてもいい感じになっていたとき。
「ふむ?金剛はこのサイズか?」
?
「何、つけているんだよ!!!」
ラジュラは俺のたまらなくなって、たっているものに、リング状ものをつけやがった。
「何だよ。これ?」
「いや、今度、うちの会社で性具も扱うことになって、そのモニターになって貰おうかと思ってのう・・
ナノテクノロジーで装着したものの感じ方によって締め付けが違うぞ。まあ、イケナイクンという名前にしようかと・・・」
俺は、憤怒で死にそうになった。
なんでこんな奴、こんな奴!俺が相手しなくちゃ・・、ならないんだ。
そう思っている間も、やつは首すじを甘噛みしたり
背骨にそって嘗め回したり余念がない。
長年、肌をあわせてきたので、熟知してやがる。
「とれ、とってくれ。とりやがれ!」
俺はぞくぞくする快感に翻弄されながらも
いけない苦しみにおかしくなりそうだ。
「おい、頼む。頼むから。」
汗が飛び散り、涙目になってきた。
なんで、こんな奴に懇願しなくちゃならねえんだ!
俺の予想外の反応に、ラジュラは少し残念そうに手のひらの中に隠していたリモコンのボタンをおした。
するっと。リングが俺から離れる。
「ああああああっ・・」
俺は声を抑えることもできず達してしまった。
息を激しく乱しながら、俺はうつぶせになってぐったりと体を横たえる。
「好かったであろう。」
いけしゃしゃと感想を聞いてくる奴の声。
あまりにも腹がたったので奴のみぞうちに一発パンチを見舞わしてやった。
夢をみていた。昔の夢だ。戦いが終わって、こいつがほかの魔将たちとともに煩悩京復興のため、帰ると言い出したとき。
頭では、ああそうかとわかっていたのに。
感情がコントロールできなくって、こいつの胸のなかでワンワンないたことがあった。
みんなびっくりしていたが、一番こいつがあせっていた。
『こういう場合、どうすればいいのだ?』と他の魔将たちに助け舟を求めていたっけ。
あのときは、あのときは、はっきりしていなかった答え。
それが今ではわかる。
❋❋❋
「金剛、金剛・・」
「あっ、スマン。うとうして夢みていた。」
「どんな夢を・・」
「お前と初めてやったときの夢だよ。」
「あの時の、お主は可愛かったぞ、まるで小鳥のように震えておった。」
その、言葉に俺は微笑む。
「今思えば、お前、淫行条例にひっかかるんじゃね。あっ、こっちの世界の法律は関係ないか?」
あのとき俺はまだ子供だった。
でも、今ならわかる、俺はこいつが好きだ。
「もう一回、今度は普通にするだろ?」
「お主のこころのままに。」
そう呟きながらラジュラは嬉しそうだ。
「ヌカセ。」
俺はのしかかってくるラジュラの背中に手を回し、
そして、静かに目を閉じた。 -
「黎明」
煩悩京からの使者が来た、アヌビスだ。
俺はこの男は嫌いではない。
むしろ自分に近いものを感じている。「ラジュラが熱で臥せっておって、
お主のことを口に出してうるさいので
一度顔を見せてやってくれないか?」まあ、顔を見せるぐらいならと言う気持ちで
アヌビスに応じた。煩悩京でのラジュラは思ったより元気そうだった。
「おぉ・・金剛来てくれたのか?近くよって顔をみせてくれ」とても嬉しそうに微笑む、昔争ったときとは、考えられない表情だった。
「おい、思ったより元気そうじゃねーか。一体どうしたんだ?風邪か?」「ここのところ妙に熱がひかん、ナアザの見立てだと知恵熱だとか?
アヌビスは恋わずらいが熱の原因だとか言いたい放題だぞ。金剛がくるとは、煩悩京の見所につれていかねば」「たわけ!病人はおとなしくせい!!」
とナアザに一喝されているのをみて、相変わらずだなと安堵したり頭が痛くなったり「案内しなくてもいいから、そこらへんぶらついてくるぜ」
俺は、病床のラジュラを他の魔将にまかせて部屋をあとにした。宴会が出来そうな大きな部屋や、旅館か?と思うようなでかい風呂
屋敷の中をぶらついてひとしきりなんか屋敷の突き当たりの部屋まできてしまった。
「ここは誰の部屋だ・・今までかってが違うようだな」外の門のような頑丈な木戸があった。
その部屋は不思議な空間だった。
ただ、部屋の中央に大きな瓶というか壺が鎮座していて
そこから、まがまがしい気配がただよってくる。
壺のふちに手をかけたとたん、物凄い力で壺の中にひきずりこまれた。気がつくと、腰まで沼につかりズブズブと体が沈みはじめている。
「おいおい、穏やかじゃないぞ!ここは一体何なんだ!」薄暗い空間によく目を凝らしてみると
そこは唯の沼ではなく、血だまりの大量の血の沼だった。
その沼からたくさんの白い手が出て自分を掴み沈めている。
「よせ、離せ!」
腰まで浸かっていたのがどんどん沈み込み胸までになった。
すると不思議なことに自分の胸のあたりが輝き始めた。何が入っていたっけ?、胸のポケットに・・鎧珠!
そのオレンジの光が俺のからだ全体を包むと、
血の沼は潮が引くように遠ざかり消えていった。俺は、ほの暗い洞窟のような空間にいた。
先ほどの白い手の奴らは、今度は黒い影になって俺を遠巻きに囲んでいる。
一つ、二つ、いやそんなどこらじゃないぞ、十、二十ぐらいか
ただならぬ気配、敵意をこちらにむき出しにしながら息を潜めて、こちらを伺っている。そんなこんなで膠着状態が続いたとき
突然、轟くような大音量で
「金剛、この中におるのか?」
ラジュラの声が聞こえた。「あぁ!なんか大変なことになっているぞ。」
「コレを伝ってくるとそこからでられる」
蜘蛛のような糸が上から降りてきた。なんか教科書でみたような光景だなとのんきに思いながら、
俺はその糸を伝って登り始めた。周りを囲んでいた影達もワラワラと集まり登ろうとするのだが、
糸に触ったとたん力もなく落ちていった。上の明るい光を目指してひたすら登る。
井戸のふちのようなものに手をかけ一気にゴールかと思ったら、
先ほどの部屋に出ていた。ラジュラが心配した顔をし、俺に声をかける
「怪我はないか」
「あぁ、鎧珠のおかげで助かった」
「あのものどもは、鎧珠の主には手がだせん。持っておって助かったナ」
「おい、お前!俺に何か言うことあるだろう」長い沈黙が二人の間に流れる。
「・・スマヌ。金剛、お主を巻き込むつもりはなかったのだ」
俺はラジュラの苦しそうな顔を見ながら次の言葉を待った。
「・・蠱毒と言うものを知っているか、
昔のもので、毒のある蛇やムカデなどたくさんの生き物を
ひとつの壺いれ戦わせる術方なのだが・・・我が鎧を得るとき同じことを行われた。
そのときに、我は最後まで残った・・・それがしは鎧珠を血塗られた手で握ったのだ」苦しそうに一つ一つ言葉を吐き出すラジュラ。
お主の見たものは、それがしが葬ったものどもなのだ。
俺は今までこんなラジュラは見たことがなかった。
いつも、人を馬鹿にしたような微笑を浮かべて、
本当だか嘘だかわからないことばかり言っている奴だとそういう奴だと勝手に思っていた。「お主らが憎かった。人だか妖邪だかわからないものになってしまって、
光輝く魂を持ったお主らがただ憎かったのだ」
とうの昔に忘れ去ったはずの感情を呼び起こす、不思議な存在。「残った眼からはもう涙もでない。あまりにたくさんの死をみすぎたせいか」
気がつくと俺の目から涙がこぼれていた。
「お主にこんな事を言うつもりはなかった。」
「バ・・・カヤロウ」
「涙の出ないそれがしのかわりに、泣いてくれるのか・・」
秀の頬にそっとふれ、まるで不思議なものを見るように涙をすくう。
「お主は闇の中に見えた光だ。それがしが失ったものをまだ持っている。
お主と居ると長い夜が明けることを、なにかが始まることを、感じる。」そう言って、長い髪がふわりと視界を覆ったと思ったら、引き寄せられ口づけられていた。
「・・っ止めろっての!」
「周りには誰も居らぬが」いつのまにか壁に追い詰められ、
被さろうとする奴を両手を伸ばして突っぱねる。
が髪の長い男はそれを苦ともせず手を絡めろとると、額に口づける。「そーでなく、俺が気にするんだっ」
「それがしは、気にしないが」
「そーゆう奴だったよな、お前は・・」ラジュラの発言に脱力して、
俺は壁に体重を預けた。
それを了解ととったのか、間の距離を縮める。「それは、褒め言葉ととればいいのか?」
「どーとでも」
俺は近づいてきた顔にはもう嫌がるそぶりは見せず、誘うように少し首をかしげて、口づけを受け入れた。
「熱も出してみるものだ」
ラジュラはほくそ笑みながら楽しそうだ。
「で、金剛を送ってしまったのか?」少し残念そうにポツリと言う。「あたりまえだ。お前の戯言に付き合わせるためにわざわざ呼んだのではないぞ」
と一瞥するナアザ。「アヌビスが得意の鼻でお主たちをみつけて踏みこまなければ、とんでもないことになっていたのは目に見えておるわ!」
「野に咲く花をあやうく手折ってしまうところであった。」
ひとごとのように呟く言葉じりを捕らえて、「ん、いつものことだろ・・」と苦笑まじりに応えるアヌビス。
「そうであったな・・いつものことだ」
ラジュラも自嘲ぎみに微笑む
それでも、暗い帳が少しずつ明けるような予感はした。 -
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これは、妄想だ!
妄想だということは分かっているのだが
俺には抜け出せなくなっている。
地下鉄で妖邪と戦っていたのだが
途中で秀と離れ離れになり。
来た電車に乗り込んだ。
!?
中には、秀、秀、秀。秀で満員だった。
牧師姿の秀。サラリーマン姿の秀。
トートバックをもってサンダルのおばさん秀。
セーラー服の秀。
俺は、ふらふらと開いている席に座った。
隣には、よっぱらってパンツ一枚の秀が・・・
ガタンゴトン・・幸せ・・もうこのままズーと乗っていたい。
おい、おい、しっかりしろよ。と言う声と同時に
顔を叩かれた。
みるとアンダーギア姿の秀が。
あの満員電車の乗客たちは跡形もなく
消え去っていた。
なに昼間からほうけているんだぁ。
一緒にやっつけに行こうぜと
いう言葉をかけられ、
少し残念ながらしぶしぶ現実にもどる俺だった。