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「イベント」 ちゃとくん 作
寒さもようやく和らいできた、3月の最初の日曜日。
連れて行きたい所があるんだ、と秀に誘われ、ついた先は浅草のとある建物の前だった。
「連れて行きたい所って・・・ここか?」
「ああ。 店のコに聞いたんだ。今日な、ここで、本のイベントがあるんだって。」
「本の、イベント?」
「それもほとんどが世間に未発表の本なんだと。 しかも、今日のイベントの元になるテーマがサムライなんとかって言うらしい。 お前の好きそうなジャンルだろ?」
秀の嬉しそうな笑顔に促され建物の中へと入ってみると、そこには。
手作り感あふれる個々のスペース。
異様な熱気。
本のイベント。 そう、これは・・・同人誌即売会ではないだろうか。
「当麻、本、好きだろ? こういうイベント、お前喜ぶんじゃないかと思って。」
読書などほとんどしない秀が、まるで自分の事のように嬉しそうに笑うその姿に、愛しさが募る。
「サンキュ。 ・・・嬉しいよ。 何より、秀のその気持ちが嬉しい。」
思いのままに抱きしめようとしたら、顔を真っ赤にした秀にグーで殴られた。
活気あふれる会場内を、二人でゆっくり見て回る。
「なんか想像してたのと違うなぁ。 もっと分厚くて古そうな古文書とか、歴史書とか、そんなんばっかかと思ってたぜ。」
「んー、でも、これなんかほら。」
と、当麻が手に取った本には、『蒼の軍師と大地の戦士』という題名が印字されていた。
「へぇ。 なんかちょっと、俺達みたいだな。」
ぱらぱらとその本をめくると、当麻は財布を取り出した。
「うん、参考にできそうだ。 まだ試した事のない方法が載ってる。 これ、買ってくる。」
「役に立ちそうか?」
「ああ。 秀、お前も、実践には付き合えよ。」
「実践? 兵法かなんかか?」
「まあ、そんなとこだ。」
「そっか。」
当麻が真剣に本を吟味しているのを見て、秀の顔にふわりと笑顔が浮かぶ。
「よし。 俺がとことん相手になってやるぜ。」
「お。 二言はないな?」
「あたぼーよ!」
当麻の黒い笑みと、表紙に書かれた「18禁」の文字に気付かず、秀は嬉しそうに笑った。
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長い夜 ななさん 作
「なあ秀君、今日秀君の家に遊びに行ってもええ?」
そうクラスの女子に声をかけられたのは金曜日の放課後だった。
「俺んち?といっても居候させてもらってる家だぞ?」
「そんなん知ってるわ~!ちゃうねんて、ほら、秀君の家にかっこええ人おるやんか~」
中心人物の佐伯ひなが顔を少し赤らめながら言葉を続ける。
「あの人にみんな会いたいねんて!!なあ~行ったらあかん?」
きゃあきゃあと黄色い声を上げながら女子たちはにじり寄ってきた。こういうときの女の団結力と逃げ場を作らない周到さには頭が下がる。
「・・・わ・わかった」
もう最後にはその言葉しか言えなかった。
「わぁ~秀君てきちんとしてんねんな~」
俺の部屋に入り込んだ女子たちは俺の部屋の物色を始める。思い思いに好き勝手なことを言いながら、笑い転げる姿に俺は何もいえなかった。
(女って子供のときからこうなんだな)
当麻の母親と少しダブって見えたなんて本人にはとても言えない・・。
「秀君、はようあの人連れてきてぇな」
佐伯の声で我に返り俺は当麻の部屋に向かった。
「当麻~帰ってるか?」
ドアを開けるとそこには高校の制服を着た当麻が立っていた。
「賑やかやな、誰か来とるん?」
ネクタイを緩める姿に、当麻がなぜ女子にもてるのかが分かったような気がした。
「なんやじっと見て。用があったんちゃうんか?」
「あ・・あぁ!そうだ実は・・」
これまでのいきさつを当麻に伝える。
「嫌ならいいんだ、断るし」
俺自身もあまり気が乗らないのも事実だった。胸がチリチリして焼けそうに熱い。
「別にええよ」
当麻の答えに俺は驚いた。
絶対嫌がると思っていたから。
「そ・・そうか?じゃあ・・」
「そのかわり」
「え?」
ぐいっと当麻に抱き寄せられる。きれいに整った顔が近付いてきた。
「秀からキスしてぇな」
「・・な・・」
顔が火照るのが分かる。
「いっつも俺からしとるし、たまには秀がしてくれたってばちは当たらんやろ?」
どきどきと鼓動が早くなっているのも当麻はきっと分かってる。
「・・・・当麻は意地悪だ」
俺の気持ちを全部知ってて、断れないのを知ってて求めてくる。
「また、そないな顔する・・なんでやねん」
少し怒ったような表情をして当麻は俺から離れた。
「嫌なら嫌やってはっきり言ったらええねん」
「・と・・・っ」
「とにかく、お前の部屋に行けばええねんな?お前は何か飲み物でも持ってき」
そういい残し当麻は行ってしまった。
当麻はその後クラスの女子と1時間近くも話し込んでいた。人見知りの当麻がこんな風に人と接する姿を俺は初めて見る。
「ありがとうな秀君。楽しかったわ~」
「ああ、じゃあまたな」
嵐が過ぎ去ったような静けさと安堵感が俺を包んだ。
「当麻、今日はありがとう」
少し気まずかったが、平静を装い当麻に笑いかける。
「でも当麻もかなり人当たりがやわらかくなったな」
そんな俺の問いかけに当麻は何も答えず煙草に火をつけた。
大きく息を吸い込み溜め込んだ煙をふうっと吐き出す。
「秀、おまえもてんねんなぁ。ファンクラブまで在るみたいやないか」
「はぁ?!」
思いもよらない言葉に俺は驚く。
もてる?俺が?!ファンクラブ?知らない。
「なのなぁ、あの子たちは当麻に会いたくて押しかけてきたんだぞ?どうしてそうなるんだよ~」
あきれて次の言葉が出なかった。
「・・・会いにきた?俺に?」
当麻はギュッと煙草の火を灰皿に押し付ける。
「・・分かってへんねんなお前は」
冷めたような視線を俺に向けたまま当麻は近付いて来た。
「『俺に会いたい』なんて口実や。目当てはお前や」
「なにいってっ・・・っ!?」
すごい勢いで抱きかかえられ当麻の部屋のベットに落とされる。
「~っ・ぃってぇ~なにすんだよ!」
乱暴な行動に俺は当麻を睨み付ける。
「なにする?『SEX』にきまっとるやろ?」
何の感情も持たない高圧的な声が俺の身体を動かなくさせた。
ビリッと当麻によってシャツのボタンごと引きちぎられる。
「・・っ・やめっ・・とうまっ!!」
「・・・うるさい・・」
引きちぎったシャツで当麻は俺の両手の自由を封じ、自分の指を俺の口に押し込んだ。
「・・う・・ううっんっ・・」
首筋に痛いくらいの口付け。
「俺のもんやって、ちゃんと印し付けとかなあかんからな」
「~っ・・・ふ・・っう」
当麻の気持ちが読み取れないまま、与えられる刺激に少しずつ身体が熱くなってゆく。
俺の抵抗が弱まったを悟ると当麻は差し込んでいた指を抜いた。
「・・いい声聞かせてぇな」
そう言ったかと思うと、自分の口腔に俺自身をくわえ込む。
激しい刺激と羞恥に俺は身体を反らせた。
「・ひっ・あっ・・ああっ・やめ・・とうまぁ・・いやぁ・・っ・」
ぬるっとした舌使いに背筋からぞくぞくとした快楽が襲ってくる。
容赦なく快感を与え続けられ、目眩すら覚えた。
「だ・・め・ぃく・・やだ・・はなせ・・いやぁっ・・!」
びくんと身体が波打ち、当麻の口腔に精を放つ。
「・・・っあ・・っく・・」
はずかしさから涙がこぼれた。
当麻が俺を見つめ、にっと口元だけ笑うとゴクリとのどを鳴らした。あまりにも生々しくて俺は顔を背ける。
「・・・お前は俺のもんや、誰にも渡さへん」
小さな子供が言うような言葉に俺は背けていた顔を当麻に向けた。
「やっと手に入ったんや、もう逃がさへんよ」
続けられた言葉に俺は目を見開く。
「・・・好きだって・・俺が言ったんだぞ・・俺が離れていくわけ・・ない」
ずっと心にしまいこんでいた気持ちを当麻に伝えてゆく。
「・・・当麻が俺のこと、気まぐれで抱いてたって・・俺は・・・」
最後は言葉にならない。
「・・なにゆうてるん?気まぐれ?誰が?」
「・・だっ・・て・・別に俺のこと好きじゃないんだろ?」
「え・・?」
涙が頬をぬらしてゆく。
「・・・俺のこと好きだって言ったこと一度も・・ないじゃ・・っ・・」
最後の言葉は当麻の唇によっえ塞がれた。
「好きや」
唇を離しそう言うとまた唇を重ねてくる。
「・・・秀が・・秀だけが好きや・・」
「・・・・と・・」
「こんなに好きやのに・・わからへんの?」
とめどない口付けに眩暈を覚えながら当麻を見つめる。
きれいな瞳が少し切なそうに揺らいでいた。
「・・・とう・・ま・・」
喘ぐような声で当麻の名を呼ぶ。
そうだった・・。
当麻は昔から感情を表すのがとても苦手で。
それを言葉で伝えるなんて一番苦手な分野で。
「・・・わからへんのなら・・・じっくり・・・教えたる」
「・・・えっ・・・あっ・・やぁっ・・!・・」
するりと秘部に指を突き立てられ、なんともいえない圧迫感が身体を苛む。
「だいぶ1本だけやと痛がらなくなったなぁ・・相変わらずきっついけど」
くちゅり といやらしい音が耳に付く。
「・っあ・・・」
「・・ええねんやろ?」
「っ・・やぁ・・だ・・・」
自分が自分でなくなりそうな感覚に俺は首を振って抵抗をする。ぞくぞくとした快感が身体をめぐり歯を食いしばった。
「嫌?・・おかしいなぁ・・ココはこんなに素直やのに」
当麻は熱くなっている俺自身を舌先で舐め上げる。前と後ろからいやおうなしに与えられる快感は俺を狂わせいく。
「・・もう一本増やしてみよか?」
そんな俺の様子を楽しむように当麻は攻める手を弱めない。
「・・ひ・・あ・ぁ・・んっ・・」
「・そんな締め付けたら・・あかんて」
「・・ッ・・あぁ・・っく・・ふ・ぅ・・」
2本の指が俺を高みへと導いてゆく。
「・・・もう・・やぁあ・・・ぁっ・・」
「・・っと・・まだイッたらあかん」
果てる寸前根元をきつく握られ、その行為を止められた。
やるせない痛みと、どうにもならない熱が身体を蝕み理性さえ奪ってゆきそうだ。
「・・・とうまぁ・・・と・・うま・・あぁ・・」
拭うことすら出来ない涙が頬を伝って落ちていく。
「・・ほら・・3本目・・・・」
「・・・っ・・も・・やだ・・やだぁ・・」
「・・好きや・・秀」
舌で涙を絡めとりながら当麻はささやく。深く強く切ない声。
すると今まで俺を攻め続けていた指が抜かれ、その代わりに指とは比べようのない熱い当麻自身が俺の中に入ってきた。
「・・・っ・・・ぁあああっ」
今までとまるで違う圧迫感に俺は声を抑えることが出来なかった。
「・・も・・おかしく・・な・・っ・・る・・」
突き上げられながら喘ぐ。
「・・ええよ・・おかしくなったって・・俺がずっと面倒見たる・・」
「・・・あっ・・あぁ・・っ・・と・・うま・・」
「・俺だけを・・見といたらええ・・俺がお前しか見てへんように・・」
あまりの快感にもう理性も何も飛んでしまっていた。
ただ、当麻から与えれれる刺激に身体全身で答えることしか出来ない。
「・・このままずっと繋がっておれたらいいのに・・」
薄れ行く意識の中当麻の言葉だけがリアルに響く。
「・・・・・好きや・・秀」
どのくらい時間がたっただろうか?あの後、何度も行為を重ね時間の感覚さえなくなっていた。
「・・・・いっ・・・てぇ・・・」
足も腰もがくがくで力が入らない。
「・・・・馬鹿当麻」
自由を奪われていた両手は知らないうちに禁を解かれていて、両手首は真っ赤に擦り切れていた。無性に腹が立ち隣で眠る当麻の頬をギュッとつねる。
「・・・・・・わるかった」
寝ているとばかりおもっていた当麻の目がぱっと開き謝罪の言葉を口にした。
「・・ぶちぎれて・・手加減も何もできひんかった・・身体きついやろ?」
「・・・・・・・」
むっつりと膨れる俺に当麻は言葉を続ける。
「・・あと・・俺は・・お前が好きや」
「・・は・・?」
「わからへんのか?好きや、ゆうとる」
「・・・・・はぁ」
最中にあれだけ言われれば俺的にはもう十分だったが、面と向かって言われると、うれしい反面冷静になってる分、気恥ずかしい。
「告白されたとき言えばよかってんなぁ・・もう伝わってるもんやって思い込んどった」
「・・もういいよ・・十分わかったし」
自然に笑みがこぼれ、その後涙も零れてきた。
「・・泣くなや・・不安にさせて・・悪かった」
優しく引き寄せられキスをされる。
そして唇はそのまま首筋に落ちてゆく。
「・・っ・・もう・・今日は・・だめ・・」
怪しく動き始めた当麻の手を止めて当麻を見つめる。
「あと、1分で明日や」
「・・・・・むりだって・・」
「・・きついことはせえへんよ・・ただ、あの同級生のことじ~っくり聞きたいねん」
「・・ただのクラス・・メイト・・ぁ・っ」
「・・『ただのクラスメイト』が好きなもんとか色とか女のタイプとか聞くわけないやろ・・この鈍感男」
どうやら俺がお茶の支度をしているときに当麻に聞いたらしい。
「まあ、上手に釘はさしたけどな」
にやりと笑う当麻の表情はぞっとするほど怖かった。
・・・・どんな手を使ったかなんて怖くて聞けない。
「・・・・好きやで・・秀」
「・・・・俺だって・・・好きだ」
勝ち誇ったような当麻の表情が近付き唇を重ね合わせる。
長い長い夜がまだ続く・・・。
end
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マッチ売りの少女。
ちゃとくん作
「マッチはいらねぇか?
頼むよ。マッチを買ってくれよ。」
凍えそうな雪の中、今日も秀の声が響く。
人々は、そんな秀の前を素通りするばかり。
「はぁぁ、寒ぃ・・・。このままじゃ凍えちまうよ。・・・そうだ!」
秀はかごの中のマッチを手にすると、シュボっと1本マッチを擦った。
小さなぬくもり。
その紅い灯りの中には、ほかほかと湯気を立てた肉まんとあんまんとカレーまんとピザまんが見えた。
「あぁ、あったけぇなぁ・・・」
1本、また1本と秀はマッチを擦っていく。
湯気を立てたフカヒレスープ。
あたたかな部屋とお風呂。
風呂上がりで火照ったの半裸の秀。
「・・・・・??」
無邪気な寝顔の秀。
ひまわりのような全開の笑顔を浮かべた秀。
肌もあらわになっている妖艶な秀。
「・・・なっ、なっ、何だこのマッチはっ・・・!」
慌てふためいて火を消そうとする秀だったが、すべては遅すぎた。
「「そのマッチ、全部くれ!」」
ふと前を見ると、よこしまな顔二つ。
「手を引け。このマッチは全部俺のだ!」
「うぬぅ、今回ばかりは譲れぬぞ、天空!」
「やめろ、このマッチにさわるなぁぁぁぁ!」
必死な形相で秀を追いかけるこの二人から、秀はマッチを守りきることができるのでしょうか・・・?
息も凍りそうな雪の中。
3人の追いかけっこは続く。