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遅れてきたクリスマス
金剛の世界では師走のころ
煩悩京に金剛を拉致してきた。
金剛をあきさせないよう
我がしてあげられる事は何かとひたすら
考え、宴会、遠乗り、武芸大会といろいろやってみた。
とりあえず楽しませてあげようと時を稼ぐ毎日毎日。
最初は楽しそうにしていた金剛。
しかし、「帰りたい」っていう声が態度から徐々に出てくる。
聴こえない聴こえない。
金剛から一切何も思われてなくて嫌われていてもいい。
そばにおいておけるだけで満足だ。
部屋に帰って来ると金剛がいる。
それだけで。
しかしその生活も長くは続かない。
昼夜問わず宴会、遠乗り、武芸大会にあけくれた我は倒れた。
金剛は心配して我の様子をみる。
私の意識はどんどん遠くなっていくが。
幸せだった。 だが、1つだけ心配なのは
我が逝ってしまったら、こやつはどうなるんだろうと。
部屋の封印していた水がめから声がする。
金剛の世界に通じる水がめだ。
天空が雪ふる中、金剛を探している。
必死に探している。。
「金剛行くのか?」と言う我の問いかけにうなずく金剛。
「すまねぇな・・ラジュラ。俺帰らなきゃいけないみたいだ。」
ぼやける視界の向こうで、幸せそうに帰っていく金剛を見送りながら
(よかった・・・)
と涙を流しながら、意識が遠のいた。
******************
クリスマスも終わり
12時も回ったころ
秀が部屋に帰ってきた。
どこに言っていたという俺の言葉をさえぎって、すまなかったなという秀。
だが、なぜか秀の体から知っている奴の香のにおいがした。
Merry Christmas! -
君が好き
人生で初めてのクリスマスパーティーは、秀、お前と2人だったよな。
2人ともまだガキで、雀の涙ほどの小遣いを出し合って。
鶏の足を2本と小さなショートケーキをひとつ。
シャンパン代わりに1本のファンタを分け合って乾杯したっけ。
両親の離婚で1人になった俺に気を使ってるのかと思いきや、
お前も心底楽しんでたよな。
「俺んち店やってるから、クリスマスマスにパーティーってしたことないんだ。
だから。お前とこうしてパーティーできるの、すっげー楽しい!」
って本当に嬉しそうだった。
「これからは毎年こうして、2人でクリスマスパーティーができるな。」
と全開で笑うお前の笑顔にドキドキしたのは、きっとあれが最初。
月日が流れ、迦雄須と出会い、仲間たちと出会い、
もっと大人数で豪勢なパーティーが開かれるようになっても、2人のパーティは続いた。
伸たちの料理が食えなくなるのはもったいないから、と、
あの時と同じ、ほんの少しのケーキと鶏肉とシャンパンで、みんなに内緒で乾杯していたあの時間の方が、俺にとっては大切だった。
特別で、何より大切だった。
2人だけのパーティーも、俺の前で全開で笑うお前も。
路地の奥から何かを壊すような派手な音と幾人かの叫び声、怒鳴り声。
聞き慣れたあの声は・・・間違う筈もない、秀の声だ。
音の出所へと向かってみれば、そこにはたくさんの人影。
20人程のやけにガタイのいい奴らに囲まれて多勢に無勢か、さすがの秀も少々苦戦しているようだ。
半ば予想していた事態に、当麻は軽くため息を吐くと、秀の加勢を始めた。
当麻の援護が加わって数分後、「覚えていろよ!」というありきたりな捨て台詞を残し、奴らは逃げていった。
身体についた埃を軽く払いながら秀へと振り返ると、秀は気まずそうに小さく笑うと「いてっ」とこぼして顔をしかめた。
見ると唇から血が出ている。
身体の方にも、何発か食らったようだ。
当麻は秀に大きな怪我がないのを確認すると、わざと聞こえるように大きくため息を吐いた。
「おまえなぁ、無茶はやめろってあれほど言ったやろ?」
「へへっ、お前にこうして説教されるの、久しぶりだなぁ。」
鎧戦士として戦っていた時も、その前からもずっと、思ったことをそのまま行動に移す秀のまっすぐなところは変わらない。
秀は大きくひとつ背伸びをすると、ゴロンと地面に寝っ転がった。
空を見上げるその顔は、何だか少し嬉しそうに見えた。
「何があった?」
「カツアゲ、されてて。うちの制服きてたから、放っとけなくってさ。」
秀の話だと。最初のほうは3、4人だったそうだ。さっさとのして帰ろうと思っていたら。「仲間を呼びやがった」のだそうだ。
「力あるものは。力なきものを守るもんだ。それを、自分の欲の為に暴力を振るうなんて、許せねぇ。」
まっすぐな視線は空へと延びたまま、おそらく今、秀が見ているのは。
あの時の瓦礫で埋まった新宿だろう。
己の強大な力に、一瞬でも驕ってしまいそうになった自分を恐れて武装が出来なくなってしまったあの時の秀を、
そして力無き者の為にと見事に立ち直ったあの強い瞳を、当麻は一生忘れることはないだろう。
その強い瞳を、ずっと見ていたいと思った。
そのまっすぐな視線に、とらわれたいと思った。
しかし。
焦がれる程のその視線は鋭すぎて、いつからか当麻と秀と目を合わせることが出来なくなっていた。
・・・ひた隠しにしている秀への想いや、ココロの奥に住む欲望までをも見られてしまいそうで。
「それに、」と秀は空を見ながらつぶやいた。
「ああいう、仁(ひと)の道から外れたことをするような奴らは許せねぇんだよ。」
秀がつぶやいたその一言に、当麻の胸がツキンと痛んだ。
ーーー秀にとっては、俺のこの気持ちも、仁の道からはずれているんやろうか。
一本気でまっすぐな。秀のこと。
男の当麻が、同性の秀に恋愛感情を抱いているなど、きっと考える余裕すらないに違いない。
許せねぇんだ、と吐き捨てた先程の秀を思い出すと、また胸に痛みが走った。
「・・・そこに、どうしても譲れない想いがあってもか?」
こぼれてしまったつぶやきは、まるで弁護をしているかのようで、そんな自分に当麻は思わず苦笑した。
「カツアゲにどんな想いがあるんだよ・・・当麻、お前この頃、ちょっとおかしいぞ。」
見ると、空へ向けられていた秀の視線は、まっすぐ当麻へと向けられていた。
ゆっくりと、確かな足取りで、当麻へと近づく秀。
久しぶりに見た真正面からの秀の顔は眩しくて、当麻は絡んだ視線をはずすことが出来なかった。
「この頃、俺を避けているよな?なんでだよ?どうして目を合わせようとしない?・・・俺、何かしたか?」
今や目の前にある秀の顔。その大きな瞳で、まっすぐに当麻をとらえて離さない。
「言えよ。当麻。何も言わずに逃げていくなよ。」
こんなに近づいたのは、いつ以来だろう。
当麻は、言えよ、と動く秀の唇を見ていた。
その赤くふくよかな唇を。
言えよ、というのだから、言ってやろうかーーー。
ずっと隠してきた自分の気持ちを。
その何気ない仕草に。
実は欲情しているという秘密を。
傷を負った当麻の胸が、そんな自虐的なことを考えさせた。
「・・・お前が、好きなんだよ。」
搾りだすようなそのセリフを、当麻はやっと口にした。
嫌悪の表情や拒絶の言葉、他にもあらゆる覚悟を決めて、やっとのことで絞り出した「好きだ」という言葉。
それなのに、あろう事か秀は、きょとんとした顔のまま。
「俺も当麻が好きだぜ?」とケロッと言ってのけた。
あらゆる覚悟を決めて、あれほどの想いを込めた「好き」が秀に少しも伝わってないことに目眩がした。
「ち、違う!俺の好きはそういう好きやないんや!」
「そういう好きってどういう好きだよ?」
「~~~っ、特別の好きや!他とは違う、お前だけが特別に好きなんや!」
「・・・俺も当麻が特別好きだぜ?」
全く一方通行の会話に、当麻は嫌でも思い知らされる。
それは、つまり、秀の中にそういう選択肢が全くないということ。
沸騰した頭で、自分でも何を言っているのかわからなくなってくる。
こんなに必死に説明して、どうなるというのだろう。
ーーー答えはわかりきってることなのに・・・!
そう思ったとき、当麻の中で何かがプツンと切れた。
秀の肩をがっちりと抱き、片手で顎を固定する。
目の前で動く真っ赤に熟れた果物のようなその唇に噛み付いた。
当麻の目の前で、紺紫の瞳が大きく見開かれた。
驚きで力が抜けたところに、すかさず舌を差し入れ、ゆっくりと、歯列をなぞる。
そのまま遠慮せず秀の口腔をむさぼった。
酔いしれてしまいそうになるのを必死でこらえ、秀の身体を引き剥がした。
2人の唇の間に、銀の糸がつながった。
「わかったやろ。・・・もう、俺に近づくな。」
2人の間につながる銀の糸を手の甲でぐいっと拭うと、唖然としている秀を置いてその場から逃げ出した。
その日のうちに、当麻は大阪の実家に逃げ帰った。
柳生邸で気の合う仲間達と暮らす居心地のいい生活は捨てがたかったが、
秀の唇の味を知ってしまった今、
そして自分の切ない希みが叶うことはないのでと悟った今、
同じ屋根の下で秀と過ごすのは辛かった。
夢にまで見た秀とのキスは、想像以上に甘くて。熱くて。
自分の中心がどんどんと夏を帯びていくのを止められなかった。
何をする気力もなく、食事もとらず、カーテンさえ開かずに、当麻はただ死んだように時間を過ごした。
こんなに長い間1人でいるのはずいぶんと久しぶりだ、とぼんやり思う。
そして、気づくのだ。
秀と出会ってからは、当麻の隣にはいつも秀がいたのだということに。
当麻の胸がまたツキンと痛んだ。
当麻が大阪に逃げ帰って数日。
蒼い闇に包まれた当麻の部屋に、オレンジ色のまばやい光が差し込まれた。
久々に開け放たれたカーテンの向こうから、眩しいくらいの太陽の光。
「まったく。俺がいなけりゃまともに生活もできねぇのか?」
いつもと変わらない口調それは、間違える筈もない、ずっと焦がれている声。
逆光に浮ぶシルエットから、呆れたように笑う秀の顔がかすかに見えた。
「お・・・まえ、なんで」
「みんなの伝言を伝えに来たんだよ。」
唖然とする当麻に、秀はちょっと怒ったように続けた。
遼から。今日のクリスマスパーティーは7時からだからな。遅れずにちゃんとこいよ!
純から。当麻兄ちゃんは僕と飾り付け係だからね!
征士から。プレゼント交換用の贈り物も忘れずに用意しておくのだぞ。
ナスティから。あなたの好物もたくさんあるのよ。楽しみにしてて。
伸から。僕が腕によりをかけて作った料理を無駄にしたら・・・後でどうなるかわかっているね?
「そして俺は、毎年恒例のヤツ、ほら。」
そう言って秀は、小さな紙の箱を当麻の目の前に差し出した。
中には苺のショートケーキ。そしてケンタのチキンが1ピースと、ハーフサイズのシャンパンが1本。
そう。今日は12月24日。
当麻が蒼い闇に沈んでいる間に、世間ではクリスマス・イブになっていたのだ。
「約束だろ。2人でクリスマス。やろうぜ。」ふわりと。
秀の顔に全開の笑顔が咲く。
当麻は、自分の頭がクラクラするのを感じた。俺は何の為に・・・!
「お前っ・・・、言ったやろ?近づくなって。俺はお前が・・・っ」
その時だ。
目の前に紺紫の何かがよぎった。
次いで唇に柔らかい感触。
秀が当麻に口づけていたのだ。
カッとなった当麻の頭が、その一瞬で思考を停止する。
当麻が大人しくなったのを確認すると、秀はゆっくりと唇を離した。
「言っただろ?俺も、当麻が好きだって。」
ゆっくりひとつ息を吐くと、秀はまだ唖然としている当麻の胸ぐらを掴み上げた。
「だいたいお前は頭いいくせに説明がヘタなんだよ!何だよ『そういう好き』って。あげくに勝手に勘違いして、1人で結論づけて、勝手にいなくなるなよ!」
秀は一気にまくしたてると、掴み上げている当麻の胸に額を押し付けた。
「・・・あんなキスだけ残して、いなくなんなよ。」
表情のみえない秀に、当麻はおそるおそる手を伸ばす。
「秀・・・ホンマに?友達の好きやないんやで?」
「・・・まだ言うかっ。」
「俺の好きと秀の好きと、同じやと思っていいんか?」
「あぁ。当麻が好きだ。そう言う意味で。」
「・・・俺、キスで終わらせるつもり、ないで?」
「・・・っ、わかってる、よ。」
「・・・秀」
「まだ何かあるのかよっ」
「も一回、キスして・・・えぇ?」
小さくうなずく秀を、ぎゅうっと、
力一杯抱きしめる。腕の中に、確かな存在を感じた。
「おわっ、やべ、もうこんな時間じゃねぇか!
当麻、着替えろ!3時の新幹線に乗るぞ。」
「え、新幹線?」
「帰るんだよ。柳生邸に。みんな待っているんだから。」
真後ろで秀に急かされ玄関の戸を開けると、当麻の頬につめたい物が舞い降りた。
「あっ・・・雪。」
ついさっきまでの太陽を見せていた空は、全く表情を変えていた。
「ずーっと2人でクリスマスを過ごして来たけどさ、初めてだな、ホワイトクリスマスは。」
目を瞬かせ、嬉しそうに空を見上げる秀が、目の前にいる。
当麻は湧き上がる幸福感を噛み締めた。
そらから舞い降りた雪は
ゆっくりとゆっくりと、大地へと降り積もる。
大地は無限にそれを受け止める。
世界中の全ての人へ、幸せなクリスマスを。
Merry Christmas! -
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忘れな草
「ナアザ~~。ナアザはいるか??」
煩悩京の屋敷でけたたましい声がする。
「うるさいぞ。ラジュラ。少しは落ち着け。」
「おぃ。もうそろそろ例のものできたのではないのか?」
「あぁ。今度は間違えなく金剛だ。」
紐をひくと隠し扉が現れ。下に下りていく階段へと続く。
「お前が間違って光輪の髪の毛など。持って帰ってくるから。
はじめは。光輪を作ってしまったでかないか・・・
アヌビスは腑抜けになって毎日子供の光輪と遊びほうけておるわ~~!!」
「そ、それで。金剛は。・・・」
「ほら。そこに。」
みると。透明の瓶のようなものに。眠っている秀が。それも小学生ぐらいの。
「成長早めてあるから。目覚めれば。じきに今の金剛ぐらいになる。
まあ。根無し草だから。あまり情はうつすなよ」
ナアザの忠告も紫色の髪の眼帯をした男には。
聞こえていないようだ。
目覚めた少年は活発そのものだった。
そっちこちっちにものが。
目づらしいようだ。
金剛に少しでも似せようと思って。
服を買ってきてみた。
「おっさん。時々いなくなるなぁ・・俺。屋敷の中を捜したぞ。」
「会社に行っていたのだ。」
「会社??」
「他の世界と繋がった門があるのだ。
その世界は。こちらと違ってせせこましいぞ。この服はその世界のものだ。」
「どの門だ!!俺も行ってみたい。」
「教えてやらない。」
「ケ~~チ!!!」
「オッサン。俺もみんなみたいに馬に乗りたい。」
「お前にはまだ無理だ。」
「ウ~~。馬にのりたいぞ!そうだ。オッサン。馬になっておぶってくれよ。」
「何で私が・・・」
「ワ~~イイ。走ってくれよ。もっと早く!!」
ゼイゼイ
屋敷の中庭を走りまわされる。ラジュラ。
「あぁ~~~。幻魔将もかたなしだのぅ。・・」
ナアザはため息をつき障子を閉めた。
「おい~~。オッサンべたべたするなよ。」
胡坐の上で後ろから抱きかかえられた格好の秀が言う・
「ん~~なんだ。お前感じているのか?」
「そ。そんなんじゃね~。ただオッサンの手がやたら胸をいじくりまわして。
気持ちわるいからよ!!」
「そういうのは。感じていると言うのだ」
「なに言っているんだよ!!!」
ある日。俺は熱を出した。
おっさんは。あわくって。
俺の頭に氷嚢をのせたり。
おかゆを作ったり。
身体を拭いたりしていた。
「おっさん。なんでそんなことまでしてくれるの。(汗)」
「お主がなにより大事なのだ。」
肩にかけられて。手が熱い・・・
俺のほうが熱が高いはずなのに・・・
ラジュラ。俺・・・俺・・・。もうだめみたいだ。
シュウ
お前は何故そんな悲しそうな顔をする。
俺。俺。もう。ラジュラと暮らせない・・・
ラジュラは。優しく秀の耳にくちづける。
ハァ・・・ハァ・・しだいに息が荒くなってくる。
あの子がいなくなった。
ラジュラの心の中にぽっかりと穴が開いてしまったようだ。
しばらく庭をみながらほうけていると。
お前に客がきているようだぞ。とナアザが水鏡をもってきた。
会社の受付のお姉ちゃんだ。
「黒田専務。秀麗黄さまが受付にいらしています。」
やれやれ~~。一番今会いたくない顔だと思いつつ。
「すぐに行くと伝えろ」といい。
背広に着替える。
煩悩京と下界を繋ぐ。妖邪門の小型のものをくぐると
そこはもう会社の中だ。
「よぅ~~。久しぶりだな!!」
秀が屈託もなく笑う。
「少し。外に行ってくると。」受付のお姉ちゃんに言い。
2人で外をあるく。もう外は春だ。
「なんだ。何か用があるのか・・・」
唐突にラジュラが聞く。
「いや・・用ってわけじゃないけどよ。お前に一言言いたくって」
秀はなぜか顔を赤らめ。視線を合わせないようにしながら。
「なんだ。お主らしくもない。いやにものの挟まったいいかただな?」
「あの・・・よ。なんだ。お前と見た。煩悩京の花は綺麗だったな。」
「お主??・・・」
「何か。俺。夢を見るとよお~~。煩悩京でお前とずっと暮らしていた。
最初は。何だ~~~???と思っていたけどよ。結構楽しかったぜ。」
「あいつが俺で。俺があいつで。あ~~~なんかよくわかんねぇけどよ。
まだ。お前のことを思っているあいつはここにいるって。伝えたくって。
お前が望むなら・・・最後の日の晩のようなこともしてやってもいいぜ・・・」と。
最後の声はだんだん小さくなって。顔は真っ赤になっている。
「金剛、それはこれから楽しみだ。」とラジュラがいうと。
「じゃあ。俺はもう行くから。悲しむなよ。あいつはけっして不幸なんかじゃ。
無かったぜ。幸せだったぜ。短かったけど・・」
そして。ラジュラを残して駆け出した。
そして振り向くと手を振った。
ラジュラは春光のなか眩しそうにその姿を見送った。 -
LOVE IS HERE キリカさん 作
以外に細かいところがあるんだよな・・・・、
気配りもきちんとしてて。まあ伸ほどじゃないけど。
などと、当麻は純の面倒や遼と遊びながら
食器を片付ける秀を見つめていた。
秀にとって、俺っていったいどんな存在として見られてんのだろう・・・・・?
そんな考え事も伸と征士によってはばまれた。
「・・・・当麻、食べないんなら片付けるけどいいのかい?」
「食事中に考え事とは智将らしくもないな(笑)」
「いやいや、食べます、食べます!!!!!もっていくな!」
こうして、俺は昼食を死守して今に至るわけである。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
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当麻に見られている・・・気がする。
ここ数日特に、だ。
当麻は俺なんかが思うよりもはるかに頭がいいし、
ルックスも抜群、黙っていりゃいい男だと思う。
実際、周囲の女の子なんか騒ぎまくりだしな。
その当麻が、なぜか俺を見ている。
しかも、その視線は普通じゃなくてなんとも俺には表現できないんだ。
なあ、当麻。お前、何がいいたいんだ?
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「なあ、伸、当麻のやつおかしいと思わないか?」
切り出したのは征士。
まあ、もうそろそろくるんじゃないかなとは思っていたけど。
さて、このごまかしのきかない男に、どう理解させようか・・・・・。
「あ、俺もそう思う。さっきなんか俺たちのことじーーーーっと見てたしさ、なんかあんのかな伸?」
さて、このお子様な大将にいかに理解させるか・・・・・と思ってたらぶっとんだ発言をした人がいる。
「あら、当麻は秀が好きなんでなくて?
あれだけ熱っぽい瞳は恋よね~~~~~~♪」
「な、な、な、ナスティ????」僕ら全員の声ははもった。
ついでになんて答えようか考えてた僕はぶっとんで声も出ないし、
遼にいたってはお顔が真っ赤、征士は固まった。
「いいじゃない、あの二人なら見た目的にも悪くないわ!」
・・・・・そういう問題ですか、
ナスティと突っ込みたいのは僕だけらしい。
「うむ、そうだな、まあ二人が幸せなら・・・・」
元来ナスティに甘い征士なんか、いつもだったら絶対反対するくせにもう!
「う、うん。俺も賛成。
だってなんか二人自然だしさ。今度ツーショットとらせてもらおうかな」
最近はまったカメラのほうへ関心が移る遼。
僕はというと・・・・・・・
気力をそがれたのでお茶の準備へと入るのだった。
その影に話を聞いていた秀に、不覚にも気づかなかったのである。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・当麻が俺に恋愛感情を持っている。
あの、当麻が俺に???????
不思議と嫌悪感とか、不安感とかそういうのはない。
ただわからない。
「だぁぁぁぁぁぁ!!!!もー埒があかねぇ!
・・・・ラジュラにでも聞いてくっか。」
ラジュラは黙って秀のあーでもない、
こーでもないということを聞いていた。
本来、秀に片思いしている身で
ほかの男との話を聞くのはどうかと思いつつ、
そこまで心の狭い男と思われたくない。
用は秀が幸せでいてくれさえいればいい、
ラジュラにはこのひと時さえも惜しむものであり幸せであるのだ。
つまり、超越した片思いというわけだ。
「おい、笑ってるけど聞いてるか?ラジュラ。
そもそも俺に恋愛感情なんてわかんねーのにどうしたらいいんだよ」
ふ、とまじめなお顔をしてラジュラが聞き返した。
「のう、金剛よ、
恋愛感情というのはそんなに難しいことではないのではないか?」
はてなというお顔をして秀が聞き返す。
「どういうことだ?」
「天空に聞いてみるがよい。案外答えが早くわかるであろう。」
「・・・・・・・わかった。」
「聞いてくれてあんがとな。なんか少しすっきりしたぜ」
「それならよかった。おぬしに悩むお顔は似合わぬでの?またくるがよい」
秀は後ろで手を振り、妖邪界を後にした。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「・・・・秀、どこにいってたんだ?」
当麻に帰ってきたら出迎えられた。
「おお、ラジュラんとこ、久しぶりにちと話をしにな。」
「なあ・・・・・・俺」
「ん、どした?当麻」
こんな不安げな当麻は久々に見た。
あの熱っぽい瞳はどこにいったのやら。
「今のお前にはわからんかもしれんけど・・・・俺、秀が好きだ。」
気づいていた、でも不快じゃないから理由がわからなかった、
でも。
「恋人になってくれなんていえへん。でも、愛はここにある。
お前しだいで俺はどうにでもなるって覚えといて。」
ああ、ラジュラのいっていたのはそういうことか。
「ああ。俺もまだ恋愛感情なんてわかんねえけど
当麻のことは嫌いじゃないぜ。」
「ほら、もうすぐメシの時間だぜ?当麻、行こう。」
「ああ」
二人、並んで柳生邸の玄関を潜り抜けた。
・・・・・・・・・愛はここにある、か当麻のやつ気障だな。
しばらくはこんなのも悪くないかもな。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー -
「真夜中の声」
夜中の2時だった。
いつもは寝つきのいい俺が眠れなくなった。
ふと。ボソボソと声がする。
小さく何人かが囁くような声だ。
「大地は汚れてしまった・・・大地をもとに戻すため。
大地の子には大地に戻ってもらうのが。一番いい。・・・」
桜がふり始めた。
秀は目覚めない。
俺が呼びかけても目覚めない。
「お前達は何なんだ。
俺は認めない。大地をもとに戻すため。
秀を人柱にしようなんて。
俺は認めない。」
風を呼んだ。桜が吹き飛ばされる。
「・・また。くる。・・また。」
桜達はブツブツ言いながら。
去っていった。
朝の光のなかで。
「おぃ。おい。起きろ。」けたたましく。
声をかける奴がいる。
「お前。昨日なにやった??。窓は開けっぱなし。シーツの上は砂だらけだぞ。」
シーツを叩くと砂埃が舞い上がる。
「いや。桜を飛ばそうと思って。」と答えると。
ぶっとばされた。
「さっさと着替えろ。
俺はシーツと部屋の砂埃を何とかしたいんだ。」と怒鳴られた。
俺は苦笑して。
あぁこの怒鳴り声が今日も聞けてよかったと思った。
Fin
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魔将オンリーの時に描いていただいた絵です。
小説も漫画もかかれる方です。
ファンです。 -
008年12月12日 (金)
「恋し愛しの騙し癖」 夢野かつきさん 作
妖邪界に遊びに来ないかと誘われたのは、
あの戦いが終わって数年が経ち、
大型連休を控えた日のことだ。
久し振りに仲間だった皆にも会えるのかと思ったら、
他の連中は用事があるらしいと残念そうな顔をして、
「せめて金剛だけでも連れていかないと、手ぶらで戻ったら何を言われるかわからない。」
と頼み込むので仕方なく付き合ってやることにした。
元敵陣に単身乗り込むのは、
ちょっと不安ではあるけれど、
寂しそうに笑うあいつの顔を見てるのも忍びなかったから。
同行を承諾したときの破顔したヤツの笑顔に、
思いのほかドキリとしたのはきっと気のせいだと思う。
久し振りに踏んだ妖邪界の地は、澄んだ空気をしていた。
うまく復興が進んでるんだなと話しかけたら、
「場所による。」と、そっけない答えが帰ってきた。
「あの戦いの最中でも、こういった平和な場所は存在していたんだ。」と。
「螺呪羅、帰ったか!!
金剛、よく来た!!歓迎するぞ!!」
着いた途端、悪奴弥守の歓迎が激しくて面食らった。
こんなやつだったか?記憶にある悪奴弥守の姿は、もっと邪悪で恐ろしいイメージだったのに。
年を重ねて年齢が近くなったせいかやたらと身近に感じる。
むしろ類友ともいえる匂いを感じる。
その夜は歓迎会を開かれて、
そんなたいしたことじゃないのにと思ってたら、
「酒を飲む理由が欲しいだけだから気にするな。」と、那唖挫に言われた。
「しばらくはつきあってもらうぞ。」とにやりとされ、
「受けて立つぜ!」と答えて二人で笑いあったりしたのが、なんだか不思議な気分だ。
それを少し離れたところで見ていたアイツが、そっと寄ってきて、「金剛は馬に乗ったことはあるか?
悪奴弥守は毎朝馬を走らせる習慣があるから、よければ明日の朝にでも付いていくといい。」
おだやかな笑顔でそう言われ、言葉に甘えて翌朝の早朝乗馬に付き合ってみた。
「二日酔いにはならなかったか。」と軽口を叩く悪奴弥守に、
そんな柔じゃねぇと返すと、
「螺呪羅が部屋に行かなかったか?」と聞いてくる。
来てないと答えたら、悪奴弥守は意外そうな顔で俺の顔を覗き込み、
ふと、遠くを見つめて寂しそうに「そうか。」とつぶやいた。
そんなふうに数日を過ごし、
そろそろ連休も終わるだろうから帰ろうかと思ったころに、
戦が始まったという知らせが届いた。
瞬時に城内に走った緊張した空気に、忘れかけてた戦いの匂いを感じる。
鎧を身に纏い、
「すまぬ、少し留守をまかせる。」と、厳しい顔でヤツは言い、
悪奴弥守や那唖挫と共に出かけて行ってしまった。
「俺も手伝うぜ。」と言ったら、慣れない戦場では足手まといだから来るなと言われた。
迦遊羅も部屋に籠もってしまい、何もすることがなく、
だからと言って何かしたいわけでもなく、悪奴弥守に頼まれた馬の世話をこなし、
もしもに備えて戦いを想定した訓練をした。
数日経っても奴らは帰って来なかった。思いのほか苦戦しているのだろうか?
心配が焦りに変わる頃、迦遊羅が部屋からよろよろと青ざめて出てきた。
「北からも新たな軍勢が来ています。急いで悪奴弥守殿達に伝えないと・・・!」
もう、いてもたっても居られなくなった俺は、無理矢理その伝令役にかって出た。
危険だからと諭されたが、
伝えたらすぐ戻るからと必死に頼み込み、
ここ数日ですっかり俺に慣れた愛馬を走らせて戦場に向かった。
「何が平和だ。あの馬鹿やろうが!!」
道行く先は、あの懐かしい戦いの頃の荒廃振りと何も変わらなかった。
何も。
アイツは、俺に平和な部分しか見せずに、安心させようとしていたようだ。
それは、とても寂しくとてもくやしい想い。
不謹慎だけど、俺がいる間に戦が起こってよかったと思う。
本当の姿をやっと見た。
本当のアイツの姿をやっと見られる。2008年12月12日 (金)
戦場に着き、見知った顔を探す。
遠くで剣を交わし技を放ってるヤツを見つけた。
妖邪界を立て直そうと戦うアイツは、とても勇ましく美しさすら感じられた。
さらに敵に斬り込んで行くヤツの背中に、別の敵が躍り出たのが見えた。
「螺呪羅!!」
気付くと、そう叫んで、
馬を敵に向けて走らせて突っ込んでいた。
武装する暇もなく、敵の太刀をアンダーギアで受ける。
馬から転がり落ち、受け身を取れずに倒れたところに、敵が剣を振りかざす。
もう、駄目だ。と、思ったその時、敵の首が飛んだ。
「馬鹿者!!何故、来た!!」
そう叫ぶアイツに、迦遊羅からの伝言を伝える。
「一旦、退くぞ!
悪奴弥守、深追いするな!」
ひとりの決断に、さっと反応し、全体が退却モードに入る。
俺は、ヤツの馬に引き上げられ、
抱え込まれるように乗せられる。
馬を走らせづらいんじゃないかと問うと、
いざという時に後ろにいられると守れないと、不機嫌そうに言われた。
守られなくても、平気だと言おうとしたら、
「無事でよかった・・・心配させないでくれ・・・。」と、
呟かれて何も言えなくなってしまった。
城に戻ると、戦いの最中の匂いは消え、また宴会と乗馬の日々が始まった。
ようやく、これは、魔将達の休息なのだと知る。
ヤツはまた穏やかな心配そうな笑顔で俺の体調を気遣う。
俺もヤツが無事に生きてここにいるのが嬉しくて、ゆったりとした時間を楽しんだ。
さすがにもう戻らないとまずいだろうと、
そろそろ戻ろうと思う旨を告げると、
何故か皆の顔が不思議そうな表情になった。
「お前、ここに永住するんだろ?」
悪奴弥守の言葉に面食らう。
何を言ってるんだ?
俺は遊びに来ただけだぜ?
「ならば、ここに来た翌日には帰らなければならなかったのだぞ?
これだけ長いことここにいたのだから、
もう元の世界では数年経ってしまっている。
もう戻らずここに住むつもりで来たのだろう?
迎えに行った螺呪羅からそう聞かされたであろう?」
那唖挫の言葉に愕然とした。
聞いてない。
そんなこと、聞いてない!!
「螺呪羅、俺を騙したな!?」
部屋に駆け込み、1人で佇んでいたヤツを押し倒し、思いっきり殴りつける。
端正な顔がみるみる腫れていく。
為すがままに俺の怒りを全て受け入れ、
俺の怒りが多少落ち着いたものになった時に、
ぽつりと呟いた。
「こうしないと、もうお主に逢うことは叶わなかった。」
そんなもの、いつでも遊びくればいいだろう!!
「数年を待たずに、お前は年を取って寿命を迎えるのにか?
私が戦で戦っている最中に、お前の寿命が来てしまうんだ。
また取り残される。」
寂しそうに言葉を紡ぐ。
「金剛、お前に出会わなければ、こんな想いを思い出すこともなかったのだ。
もう、お前がいない世界に生きていくこてなど、耐えられん。」
とつとつと呟かれる。それはとても真剣で切なくて。
「だったらお前が俺の方に・・・」と言おうとして、
今の妖邪界から螺呪羅がいなくなったら再建が滞るであろうことを思い出した。
「すまないと思っている。お前を騙すのはこれで最後にすると約束するから」
ふと、一呼吸置いて俺を見る。涼やかで寂しそうで、愛おしそうに、
俺を見て、「ここで共に生きて欲しい。」と、ささやく。
馬鹿やろう・・・。
いきなり大変な決断を迫られ俺の脳がとまどう。
「本当に、最後だからな。約束しろよ。」
ヤツの胸を小突きながら言うと、アイツは嬉しそうに感謝の言葉を紡ぎ、俺を力いっぱい抱きしめた。
親や兄弟や友人達に心の中でそっと謝る。
でも、俺の預かり知らないところで、
こいつが戦に敗れて朽ち果てたりするのは耐えられないと思った。
この気持ちがどこからくるのかは、まだしばらくは気づかない振りをしていようと思う。
終わり。 -
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